「……これは?」
「えーっとおー、鮭の黒焼き?」
「何が黒焼きだ。ただの焼きすぎだろうが」
「あー、うー」
「こんな発ガン物質たっぷりのものを俺に食べさせてどうするつもりだ? ガンにかかってとっとと死ねとでも言いたいのか? こっそり生命保険掛けておきましたとかそういうことか?」
「そんなことない、そんなことないです。ほんとに」
「じゃあなんだこれは」
「そのお、中の方は食べられるかな?」
「かな? じゃないだろ。それならちゃんと焦げたところを削って出せよ」
「……ごめんなさい」
「ま、俺もお前がそんな気遣いできるとは思ってないけどな。で、どうしてこんなになるまでほっといたんだ」
「いやその……」
「あ、そうか。今日はあれがあったな」
ぎくっ。
「どうせTV見てたんだろ。あのキャラの萌えシーンでもあったか」
「……」
「『カッコイイー! これって絶対愛よね』なんて悶えてて、ついグリルに火を入れていたのを忘れていた、と」
「その……」
「腐女子やめろとは言わん。だがお前、揚げ物していてTVかじりつくのだけは絶対やめろよ」
「……はい」
「魚焦がすだけならいいが、火事になったら洒落にならんからな」
「……はい」
「じゃあ食べるか」
「え?」
「どうした?」
「えっと、その、これ、食べるの?」
「当たり前だ。そのつもりで出したんだろ」
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