昼下がり。あたしはぽかぽかとした日差しに誘われて学校の中庭を散歩中。
天気がいいからか、中庭にバスケットゴールを持ち出して遊んでる人たちがいる。
元気だなあ。あたし、食後すぐに運動なんかできないよ。
しかもばんばん魔術使ってる。魔術学校ならではの光景だけど、「暴発娘」の異名をもらっちゃったあたしとしては、こんな風に遊びで気軽に使えるのはちょっとうらやましい。
知ってる人がいるわけではなかったので、あたしはどこか別のところに行くことにした。
ほけほけとあてもなく歩く。日差しは暖かく、風はさわやか。
なのになんだか頭の後ろの方がずーんとくる。
あれだ、嫌な予感ってやつ。
あたしはこの手の「嫌な予感」の的中率は高い。ほぼ100%って言っていいぐらい。
でも「嫌な予感」がなくてもヤバいこと、マズいことはよく起きるしよく起こすので、全然役に立たない。
そして「嫌な予感」があるとまず避けられないので、余計意味がない。
それでも予感に逆らえないあたしは、何かが来るであろう後ろを振り返る。
と、ボールが、バスケットボールがあたしの顔めがけて一直線に。
避けなくっちゃ。
でも体が動かない。
呪文を唱えてボールを避けさせる?
でもそんな余裕はない。
精度は悪くなるけど、でも、念じれば、とりあえず集中すれば、そうしたらなんとかなるかも。
(さけて、ボールよ、さけて!)
「!!」
思わず目をつぶったあたしの顔に、バラバラと小さなものが勢いよく当たり、同時に耳をつんざく音がした。
破裂音? 風船を割ったような、でももっと鈍くて重くて大きな音。
そっと目を開く。顔には痛みが残ってるけど、手で確認しても怪我をしてるようではない。
足元には小さなかけらがいっぱい落ちていて、あたしの服にも同じものが結構くっついてるのに気が付いた。
なんだろこれ。
「おーい、大丈夫か?」
ボールが来た方向から人が走ってくる。
あたしは「大丈夫です」と声を出そうとしたけど音にならず、とりあえずうなずくだけ。
「ボールどこ行ったんだ」
その人はあたしをほとんど無視して、ボールを捜しに行ってしまった。
あたしは足元の破片を拾う。どう見ても、今までボールだったものにしか見えない。しかも消せない魔術の痕跡。
あはははは、あたし、ボールを避けさせようとして、ボールを裂いちゃったのね。
どうしよ。壊しちゃったよ。
結局、学校の備品だったそのバスケットボールのことで職員室に呼ばれて昼休憩はつぶれてしまったのだった。
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