MSN毎日インタラクティブによると、「諸君!」11月号で詩人の荒川洋治がテルーの唄 (ゲド戦記 劇中挿入歌)は萩原朔太郎の詩「こころ」に類似していると指摘しています。スタジオジブリからコメントが出て、今後は「この曲の歌詞は、萩原朔太郎の詩「こころ」に着想を得て作詞されました」と表記するようにしたいとありました。CDの再版分なんかでその表記を付け加えるようなことをするのかな?
実際に盗作・盗用と呼べるのかは私には判断がつきません。うたまっぷ歌詞検索にある「テルーの唄」と、青空文庫「萩原朔太郎 純情小曲集」内にある「こころ」とを比較すると、たしかにフレーズの一部が類似してはいますけど。
萩原朔太郎は1942年没。著作権は消滅しています。複写や公衆送信、翻案などは自由にやっていいです(だから青空文庫にある)。でも、実は著作者人格権(公表権・氏名表示権・同一性保持権)というのは遺族が生きている限り消滅はしないと日本の著作権法にはあります。
(著作者が存しなくなつた後における人格的利益の保護)
第60条 著作物を公衆に提供し、又は提示する者は、その著作物の著作者が存しなくなつた後においても、著作者が存しているとしたならばその著作者人格権の侵害となるべき行為をしてはならない。ただし、その行為の性質及び程度、社会的事情の変動その他によりその行為が当該著作者の意を害しないと認められる場合は、この限りでない。
(著作者又は実演家の死後における人格的利益の保護のための措置)
第116条 著作者又は実演家の死後においては、その遺族(死亡した著作者又は実演家の配偶者、子、父母、孫、祖父母又は兄弟姉妹をいう。以下この条において同じ。)は、当該著作者又は実演家について第60条又は第101条の3の規定に違反する行為をする者又はするおそれがある者に対し第112条の請求を、故意又は過失により著作者人格権又は実演家人格権を侵害する行為又は第60条若しくは第101条の3の規定に違反する行為をした者に対し前条の請求をすることができる。
2 前項の請求をすることができる遺族の順位は、同項に規定する順序とする。ただし、著作者又は実演家が遺言によりその順位を別に定めた場合は、その順序とする。
3 著作者又は実演家は、遺言により、遺族に代えて第1項の請求をすることができる者を指定することができる。この場合において、その指定を受けた者は、当該著作者又は実演家の死亡の日の属する年の翌年から起算して50年を経過した後(その経過する時に遺族が存する場合にあつては、その存しなくなつた後)においては、その請求をすることができない。
第116条の3を見る限り、遺族が存する場合は著作者死亡の翌年から50年を経過していても著作者人格権の主張はできると読めます。朔太郎の長女、萩原葉子は2005年7月1日になくなられていますが、その長男(朔太郎の孫)は存命中と思われます。
今回の件が氏名表示権や同一性保持権の侵害にあたるかどうかは難しい、というかあまり目くじら立てたら文化の創造なんてできなくなる。ジブリ側も「着想を得て作詞した」と表記していくと言っている以上これで決着してほしいところ。
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