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『アンゲルゼ 永遠の君に誓う』切なく感動の最終巻

アンゲルゼ―永遠の君に誓う (コバルト文庫)

感染症「天使病」と天使病発症者が変貌した種族「アンゲルゼ」によって人類が追い詰められた世界において、少年に心を残しながらも「特別」だということに苦悩し選択する少女と、少女への思いを自覚し長い道のりを歩む覚悟をした少年の恋物語。

著者の須賀しのぶさんのブログで「全5巻の予定が4巻で完結することになった」という内容が書き込まれたのを読み、「ええ! なんで?」と愕然としたのを覚えています。ついでに11月発売のライトノベルで「これは切り上げ完結だなあ」というのが二冊続いたのでビクビクしていました。

確かに「あと1巻欲しい」「二分割したほうがいい」と思わせてくれる内容でしたが、それでも大満足でした。レジデント初期研修用資料のmedtoolzさんが前半を購入したまま積んでると知って、Twitterで「ぜひ読みましょう」コールしてしまうぐらい。10冊オーバーのライトノベルが当たり前な状態で、4冊だと人に勧めやすいですね。

「特別」であることを描くライトノベルは山ほどあるけど、「特別」であることで「異形」となり、「社会」から「いじめ」という形ではじかれていく様を描くライトノベルはそうそうない。それでも「社会」を愛し、「社会」を守るために「社会」から離れていく選択をした陽菜の強さはすばらしいです。1巻のころから比べると格段に強くなりました。

売り上げがよくないらしいというのはファンにとっては悩みどころ。「流血は受けないのかなあ」とか「少女小説を含むライトノベルにおいては組織の論理に従わざるを得ない展開は反発食らうのかなあ」なんて思ってしまいました。でもそういうものがあるからこそ、有紗に対する湊の思いと、それを欺瞞だと言う敷島の言葉が栄えるんだと思うんですよ。

大満足なんだけど、それでも「ああ、ここが知りたかった! 見たかった!!」というのは山ほどあります。第二部書いて欲しいぐらい。ただ、第二部できたらほんとに「血と硝煙の臭いしかしない殺戮の嵐」になりそうです。でも死体の山の上で行われる再開シーンは読みたい。ものすごく読みたい。切実に読みたい。これ以上とない余韻を残した美しい終わり方だとはわかっていても、それでも読みたいと思うのはファンの業ですよね。

以下、エピローグまで読んだ上でのもーちゃんへのエール。ネタバレ満載です。

「7,8年がとてつもない長さ」なのに「10年があっという間」という感覚は、三十路な私にはよくわかります。11歳の息子が赤ん坊だったころから考えるとあっという間なのに、その息子が18歳になるところなんて想像もできない。

陽菜はどのくらい「人間として育った少女」としての意識を残してるんでしょうね。「人間と友好的であろうとする美しい歌声の持ち主」が陽菜であることは疑いようがないのですが。とはいっても「15年で女王交代」というのが正しく、そして陽菜が女王になってしまったのだったら、エピローグの時点であと5年しか残されてないわけで......もーちゃんガンバレ。

アンゲルゼ社会について断片的なことしか読者にもわかっていないので、「女王の寿命が15年」なのか、「女王を降りてからもそこそこの余生がある」のかもわからない。第二部があるならアンゲルゼ社会について詳細に描かれるのを希望。

敷島と湊が陽菜によって癒されたあと、もういろいろと吹っ切れてる様はほっとしました。それにしても「上官が敷島で部下が湊」って最悪じゃなかろうか。「大隊長に嫌みを言われ、鬼軍曹にいじめられる新任小隊長」って王道パターンなだけでなく、陽菜がらみのいろいろが彼らにはあるんだから。さっそく「ちゅー」ネタでいじられるぐらい。もーちゃんガンバレ、別の意味で。

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posted with All Consuming at 2008.12. 4

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