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『黄金の王 白銀の王』はファンタジー政治劇の傑作だ

黄金の王 白銀の王

どういうきっかけで手に取ったのかさっぱり忘れてしまったのですが、『黄金の王 白銀の王』を読了して圧倒されています。同一作者の『千年の時をこえて』が竹岡美穂イラストでセンサーにひっかかり、同一作者の『黄金の王 白銀の王』が図書館に入っているのを見つけて読んでみることにした、ってところだったかも。2007年10月の出版なので、私は1年以上存在を見逃してたんだなあ。

表紙が児童文学的だったので、こどもの視点から見た戦記かと思ったら全然違いました。完全に大人向け。「本物の夫婦になる」あたり(直截な描写はありません)小中学生ではついていけないよなあ。

ただ大人のファンタジージャンルを好んで読む私にとっては、日本的架空国家を舞台とする割に、地の文にときどきカタカナ言葉が交ざっていて、そこで現実に引き戻されるのが残念でした。漢語にカタカナ言葉のルビなら気にならないんだよなあ。あと、画数が多く難読な人名が頻繁に出てくるところに読みにくさを感じました。でもそれはあくまでも些細な部分。

大王の子孫が二つに分かれて骨肉の争いを続けていた国で、大局的視点を持つ二人の長が、外国の襲撃、弱体化した王族を圧倒しかねない他の豪族、目先の恨みしか心にない身内といかに戦っていくかというストーリー。人間以外の知的種族は出てきませんし、魔法も存在しません。にもかかわらず主題を表現するためには架空の国家、架空の状況を設定する必要があったのだと感じられました。

時に謀殺を行い、時に独善的に物事を推し進めつつ、理想の国家を追い求める王と、王位の奪還を胸に秘めつつ国家の繁栄のために王に協力するもう一方の長。時にすれ違い、悩み、裏切られ、悲劇的な結末となっても、同じものを見続ける二人に感動しました。

基本的に政治的謀略劇なのですが、ときどき挟まれる王妹と幽閉されたもう一方の長との夫婦関係が、時にほっこりと、時に切なく胸に迫ります。

ワード

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